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わさびスルフォラファン コラム

日本原産の薬草、知られざる本わさびの健康効果

投稿日:2021.06.24  |  更新日:2021.06.24

本わさびに含まれる驚異の機能性素材「わさびスルフィニル®」を紐解く

刺激的な辛味と清々しい香りで愛されるわさび。さまざまな健康効果が期待できることから世界的な注目を集めています。ここではわさび研究のパイオニア、金印株式会社開発本部部長の奥西勲さんと、金印株式会社アグリビジネス研究所専任部長でわさび一筋!の研究員玉木幸愛さんが、日本原産のスーパー食材、本わさびの効果を解説します

日本人の食卓になくてはならない食材の一つが、わさびです。わさびには日本原産の本わさびとヨーロッパ原産の西洋わさびとあり、近年、本わさびに備わる健康効果が続々と明らかになっています。いち早く本わさびの機能性成分に注目し、科学的に実証すべく20年前からわさび研究に取り組んでいるのが、名古屋に拠点を構える金印株式会社です。開発部長の奥西勲さんと、アグリビジネス研究所専任部長を務める玉木幸愛さんは、本わさび研究の第一人者として知られているのです。

玉木幸愛さん : 金印株式会社アグリビジネス研究所専任部長でわさび一筋!の研究員

味も性質もいい、究極の本わさびを求めて

「本わさびの面白さは、産地や品種、育ったわさび田の水系、栽培環境、育てる人によって性格も姿も全く違うところ。わさびの世界では『農家の数だけ品種がある』なんて言われますが、有名な栽培品種のほか、全国各地に“在来”と呼ばれるわさびがあって、どの子もそれぞれ魅力的なキャラクターの持ち主なんです」というのは、本わさびに魅せられ、29年に渡って本わさびの研究を行っている玉木幸愛さん。
「栽培が多いのは、長野県と静岡県。長野県で栽培されている系統は実生系中心。茎が青々としており、1年で収穫できるものが多いのが特徴です。静岡県では、3大品種の一つ、『真妻』を中心に、“おらが村”の独自品種を研究して栽培しているほか、試験管培養苗も多く取り入れられています。

私は育種、つまり品種改良・系統改良を行っているのですが、本わさびはたった一本でも自分好みの子ができると、すぐに試験管培養でそのクローンを無限に作り出すことができる。つまりすぐに実用化できるんです。これぞ!という本わさび、つまりイケメンで性格が良くて頭が良くてスマートで、そういう究極の本わさびを作り出して実用化すべく、日々、研究を続けています」(玉木)

消費者が関心を持つのは品種よりも食べ方に関わる特徴かもしれません。たとえば辛味。品種によって異なるものの、本わさびの特徴である辛味は3〜5分でピークを迎える、と玉木さん。一般に実生系や水分を多く含む本わさびは一気に辛味のピークに達し、反対に「真妻」を中心とする粘りのある本わさびは辛味のもちがいい点が特徴的です。

「さらに部位によっても辛味が変わります。上の方はみずみずしくて辛味も穏やか。香りが清々しいのでヨーグルトやサラダにあわせてもおいしくいただけますよ。繊維質が多い最下部は強烈な辛味が特徴。私のおすすめは、チーズと一緒にパンにのせたトースト。真ん中は、すべてのバランスが良いですね。わさびの美味しさをもっとも味わえます。お刺身なら、魚種や脂ののりによって、わさびの量や部位を使い分けるという究極の楽しみ方もできます。ほかにもステーキに添えたり、さまざまなレシピに合いますから、ぜひ食べ比べて辛味の違いを感じてみてくださいね」(玉木)

活性酸素から身体を守る

本わさびがにわかに注目を集めるようになった背景に、本わさびの根茎にごくわずかに含まれている機能性成分、6-メチルスルフィニルへキシルイソチオシアネート(6-MSITC)があります。効能はといえば、激しい運動、飲酒や喫煙、日々のストレスや有害物質が原因で発生する活性酸素から身体を守ってくれる高い抗酸化作用を備えます。この6-MSITCは本わさびにごく微量しか含まれないので、より利用しやすいように金印独自の製法で抽出・濃縮した「わさびスルフィニル®」を開発しました。6-MSITCの効果を、金印株式会社で開発部長を務める奥西さんが解説します。

奥西 勲さん : 金印株式会社開発本部部長

「代表的な抗酸化物質にポリフェノールやビタミンCがありますが、ポリフェノール、ビタミンCが活性酸素そのものに働きかけてこれを除去するのに対し、6-MSITCは細胞に働きかけて活性酸素を発生させないようにします」

このアプローチの違いが重要なので、もっとわかりやすく解説してもらいましょう。
「火事にたとえて考えてみましょうか。ポリフェノールやビタミンCは、火事になってから放水して消火活動を行うのに対し、6-MSITCは難燃性の素材で家を建て、出火そのものを防ぐイメージ。火を出さない(活性酸素を生じさせない)ということは火によって家や家具が傷まない(活性酸素がもたらすダメージに細胞がさらされない)ので、より効率がいいと言えるでしょう」(奥西)

抗酸化作用だけではない、本わさびの健康パワー

さて、驚異のわさびに備わる機能はそれだけではありません。昔から刺身にわさびが添えられてきたように、古くからその殺菌作用は知られていました。この殺菌作用以外にも血液をサラサラにする血流改善効果、関節の痛みなどを和らげる抗炎症作用、さらには美肌効果、脂肪燃焼効果も証明されているのだそうです。さらに近年、奥西さんらの研究により、なんと脳機能を改善する作用があることもわかってきたのです。
「モデルマウスに6-MSITCを摂取させたところ、アルツハイマー病のモデルマウスでは認知機能が、パーキンソン病のモデルマウスでは運動機能が改善しました。『わさびスルフィニル®』を摂取した中高年の判断力や注意力が向上したという臨床実験の結果も出ています。

また、6-MSITCと青魚に含まれるDHAの組み合わせが神経伝達物質のドーパミンの分泌量を上げるという研究結果も出ています。江戸時代から日本人が行ってきている寿司や刺身とわさびの組み合わせは非常に理にかなっているということも科学的に明らかになってきました。

さらには、これまで廃棄されてきた葉の部分にイソサポナリンというフラボノイドが含まれていることがわかりました。これには脱毛抑制作用があります。実際に女性の被験者を使った臨床実験では、なんと6割の毛髪環境が改善されました。現在は世界各国でヘアケア化粧品に活用されています」(奥西)

さまざまな健康効果を備え、かつ副作用がないという奇跡の食材、本わさび。今後さらに研究・開発が進めば、副作用のある薬剤を本わさびで代替できるようになるかもしれません。
「いま私たちが取り組んでいるのは、『わさびスルフィニル®』のアンチエイジング効果の研究です。老化のメカニズムを考えると『わさびスルフィニル®』が効果を発揮しないわけがない。10年、20年と『わさびスルフィニル®』を取り続けることで、どこにどう働きかけ、私たちの老化をどう変えていくのか。その可能性やメカニズムを今後明らかにしていきたいと思います」(奥西)

まさに日本人の健康を担ってきたといえる本わさびですが、国内消費の減少に伴い、農家も生産量も減り続けています。本わさびを取り巻くこうした環境に危機感を覚え、わさび産業を守ると同時に本わさびの真の価値を広めるべく、奥西さんたちが開発したのが、「わさびスルフィニル®」含有のサプリメント。これに応えるべく、玉木さんが育種に情熱を注いでいるのです。玉木さんが求める「イケメンで性格が良くて頭が良くてスマートな」究極の本わさびとはつまり、「わさびスルフィニル®」を豊富に含み、農家が栽培しやすく、かつ辛みや風味が豊かな本わさびのことなのです。

「研究すればするほどさまざまな効果が見つかる本わさびは、生命の根幹に関わる部分に作用する奇跡の植物だという確信があります。人生100年時代に向けて『わさびスルフィニル®』のさらなる効果効能を研究し、本わさびの魅力を世界に発信していきたいですね」(奥西)

ところで、広く流通しているチューブタイプのわさびや一般に流通している商品には「わさびスルフィニル®」は含まれないのでご注意を。狙うはフレッシュな本わさびや「わさびスルフィニル®」豊富なサプリメントなどの加工わさびです。