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「ワサビスルフィニル®」とは〜日本古来の薬草、ワサビがもたらすスゴイ効果〜

投稿日:2019.12.17  |  更新日:2022.03.17

ワサビを紐解いて生まれた機能性成分「ワサビスルフィニル®」って?

NMNに続いてNOMONが注目した成分、それは日本原産の植物であるワサビに由来する。なぜいまワサビなのか、ワサビが持つ機能性成分とは。ワサビ研究のパイオニア、金印株式会社で開発本部部長を務める奥西勲さんが語る、「LIFE IS LONG.」を叶えるかもしれないワサビの秘密。

日本人の食生活になくてはならない食材、ワサビ。数百万年前に中国大陸からもたらされた原種から独自に進化を遂げた、日本原産の植物である。日本の歴史に登場するのは1,300年前のこと。飛鳥時代の遺跡から薬草として用いられていたことを示す史料が出土している。料理に使われるようになったのは鎌倉時代以降で、現在のように薬味として用いられるのは江戸時代になってから。いずれにしろ、その消臭効果や食材に対する抗菌効果は長く私たちの健康と食卓を支えてきた。

薬草としてのワサビに注目し、その薬効成分を紐解こうと20年前からワサビ研究に取り組んでいるのが、名古屋に拠点を構える金印株式会社だ。当時、ワサビががん細胞を抑制するという研究データはあったものの、それ以外の機能を裏付けるデータはなかった。そこで一から基礎研究を始めたのである。

薬草としてのワサビの効果に注目し、その薬効成分を研究する金印株式会社

細胞そのものの抗酸化能力を高めるワサビの力

「ワサビには日本原産の本ワサビとヨーロッパ原産の西洋ワサビの2種類があり、辛味成分は同じですが構成成分は大きく異なります。私たちが注目するのは本ワサビ。その根茎に、わずかにわさびスルフォラファンという機能性成分が含まれているんです。基礎研究で明らかになったのは、その機能性成分が持つ高い抗酸化作用でした」(開発本部部長の奥西勲さん)

生物は大気中に約20%の割合で含まれる酸素を利用して生命活動を行なっている。酸素は外界からの刺激に反応して細胞伝達や免疫機能の役割を担う活性酸素に変化するのだが、この発生が過剰になると細胞を傷つけ、がんや心血管疾患、生活習慣病など様々な疾患を引き起こす一因となる。このような活性酸素から細胞を守るため、生体には抗酸化機能が備わっているが、その働きを助けるのが抗酸化物質だ。

「ポリフェノールなど通常の抗酸化物質は活性酸素に直接働きかけてこれを除去します。本ワサビの抗酸化作用は全くアプローチが異なり、活性酸素を発生させないよう細胞自体に働きかけるんです。つまり細胞そのものの抗酸化能力を高めるんですね。実際、マウスを使ったある実験では活性酸素の発生を48%抑制しています。

これを火事に例えるなら、通常の抗酸化物質が出火した火に対して消化活動を行うとすれば、本ワサビの抗酸化作用は難燃性の素材で家を建て、出火自体を防ぐようなもの。活性酸素によるダメージにさらされないで済むので、非常に効率がいいということがお分かりいただけるでしょう。実際にラット細胞にわさびスルフォラファンを1度添加すると、酸化ストレスによる障害から細胞を守るタンパク質の発現が24時間上昇することも確認されています。(※1)」

がんや心血管疾患、生活習慣病の要因となる活性酸素から身を守る抗酸化機能は40代から急激に機能低下する

本ワサビの機能性成分「わさびスルフォラファン」がもたらす様々な効能

激しい運動時の酸化ストレスを測定する臨床研究では、本ワサビの機能性成分が活性酸素の発生を抑制し酸化ストレスを軽減することが認められた。さらにはシミやそばかすを改善する美肌効果、膝関節の痛みを和らげる抗炎症作用も認められている。また、血小板凝集抑制作用も基礎研究で確認されており、血行の改善効果なども期待されている。(※2)

「この機能性成分わさびスルフォラファンは根茎に含まれており、すりおろすと酵素反応により出現します。ところが同じ酵素反応により、辛味成分であるアリルからし油(アリルイソチオシアネート)も出てしまうんです。健康食品として利用するために辛味成分を除去した機能性素材を開発しまして、これを『ワサビスルフィニル®』と名付けました」

動脈硬化やがん、生活習慣病を誘発する原因になる活性酸素は、様々な細胞・組織の機能低下を引き起こす。その発生を防ぐという意味で、「ワサビスルフィニル®」は老化抑制をサポートするといえるのではないか。

「抗老化という点では『ワサビスルフィニル®』に期待できるのは高い抗酸化作用だけではありません。実は最近、脳神経細胞に対してもある効果を発揮することがわかってきたんです」

ワサビスルフィニル®の秘められた可能性

細胞を守るというプロセスについて重要な役割を担っているものに、転写因子(DNAと結びついて遺伝子の発現を制御するタンパク質)のNRF2がある。NRF2は活性酸素などによる酸化ストレスによって活性化し、細胞を保護する働きがある。近年、このNRF2を欠くと環境などの外的ストレスに対して弱くなるばかりか、活性酸素など内的ストレスの影響も受けやすいことがわかってきている。また、このNRF2を効果的に活性化するのがわさびスルフォラファンを含有するワサビスルフィニル®であることがマウスを用いた実験ですでに確認されている。

2019年11月22日に金印が開催した「第4回わさびフォーラム」では、東北大学加齢医学研究所の本橋ほづみ教授により、さらに画期的な研究成果が発表された。わさびスルフォラファンがマウスにおいて脳を含む様々な組織でNRF2を確かに活性化していることが確認され、さらにこのNRF2を活性化すると、アルツハイマー病モデルマウスの中枢神経の酸化ストレスレベルが低下、神経炎症が抑えられ認知機能が改善するというのである。

「かつては死んだ神経細胞は蘇らないと言われていました。ですが、NRF2の活性化により脳神経細胞が新たに作られ、死んだ神経細胞を補うように伸長することが近年の研究でわかってきました。また、神経伝達物質の分泌量が増加することも確認されています。

これまでの研究から、健康の維持を目的とした場合には、NRF2は適度に穏やかに持続的に活性化することが重要であると考えられており、薬剤よりも食品に含まれる機能性成分を用いた方法が適切であると考えられます」

NMN、そしてワサビスルフィニル®。プロダクティブ・エイジングの鍵を握るのは、健康維持に有用な科学的根拠を持ち、かつ手軽に摂取できるこれらニュートラシューティカルにあるといえるのではないだろうか。

※1 参考:J Pharmacol Sci 115, 320-328(2011)
※2 参考:金印わさび機能性研究所「ワサビスルフィニル®の機能性」
http://www.wasabi-labo.jp/sulfinyl/function/