老化抑制のメカニズムと
NMNの役割
[ NMN ]
NAD+に変換されると考えられています。
[ NAD+ ]
あらゆる生物の細胞に入っていて、
エネルギーを生み出す際に使われるいわば、体内の代謝の源です。
しかし、NAD+は歳を取れば取るほど体内から減っていきます。
そして、NAD+そのものを摂取しても
細胞には取り込まれないことがわかっているため、
NAD+の前駆体であるNMNを摂取することが
効率的であると考えられます。
NAD+は、以下の2種類の方法で
老化抑制に利用されることが期待されています。
ミトコンドリアでの
エネルギー(ATP)産生
サーチュイン(SIRT)
の活性化
NMNはNAD+上昇を介して、
サーチュインを活性化し老化を抑制する
ここまできた!
老化・寿命研究の最前線
つまり、NMNによる明らかな抗老化作用が確認されたのです。
サーチュインが関与する疾患
Cell Metab. 2018 Mar 6;27(3):529-547.
サーチュインファミリーの
機能と関連疾患
分子名 |
局在部位 |
機能 |
関連疾患 |
---|---|---|---|
SIRT 1 |
核、細胞質 |
糖代謝、脂肪酸化、サーカディアンリズム、炎症 |
糖尿病、認知症、寿命 |
SIRT 2 |
核、細胞質 |
細胞増殖抑制、DNAダメージ、炎症 |
癌、炎症性疾患、 心疾患、寿命 |
SIRT 3 |
ミトコンドリア |
エネルギー(ATP)産生、クエン酸回路、 電子伝達系・酸化的リン酸化、アミノ酸代謝、 脂質代謝、タンパク質代謝、 活性酸素(ROS)、ミトコンドリア品質管理 |
心疾患、神経変性疾患、 急性腎炎、癌 |
SIRT 4 |
ミトコンドリア |
アミノ酸代謝、脂質代謝、クエン酸回路 |
癌、肥満 |
SIRT 5 |
ミトコンドリア |
脂質代謝、解糖系、活性酸素、尿素サイクル |
癌、心疾患 |
SIRT 6 |
核 |
ゲノム安定性、テロメア、セントロメア制御、 DNA修復、糖代謝、脂質代謝 |
癌、炎症性疾患、 心疾患、寿命 |
SIRT 7 |
核 |
リボソーム生合成、細胞ストレス応答 |
代謝性疾患、癌、寿命 |
Introductory Review on Sirtuins in Biology, Aging, and Disease,1st Edition. 2018 Academic Press.
老化抑制を期待して、
NMNを日常的に摂取する
食物中のNMN量
食品 |
NMN含有量 mg/kg-food |
食品重量 kg/250 mg※-NMN |
NMN 250 mg※相当に達するには どれだけ食べればいいか? |
備考 |
---|---|---|---|---|
枝豆 |
5 - 19 |
14 - 54 |
20,000個 |
3g /粒 豆:さや=1:1重量 |
ブロッコリー |
3 - 11 |
22 - 100 |
4,000房 |
350g / 株 25g /房 |
きゅうり(種) |
6 |
44 |
ー |
140g /きゅうり |
きゅうり(皮) |
7 |
38 |
ー |
140g /きゅうり |
キャベツ |
0 - 9 |
0 - 28 |
28個 |
1kg /個 |
アボカド |
4 - 16 |
16 - 70 |
600個 |
170g /個 120g (可食部) /個 |
トマト |
3 |
84 - 96 |
600個 |
150g /個 |
マッシュルーム |
0 - 10 |
0 - 24 |
2,000個 |
12g /個 |
牛肉(生) |
1 - 4 |
60 - 416 |
2,000ステーキ |
150g /ステーキ |
エビ |
2 |
114 |
10,000尾 |
10g /尾 |
※ 現在、NMNの臨床研究において1日にヒトが摂取している量
Cell Metab. 2016 Dec 13;24(6):795-806.生ミルク中のNMN量
種 |
NMN含有量 μM in milk |
NMN含有量 mg/L-milk |
NMN250 mg※相当に達するには どれだけ飲めばいいか?(L) |
備考 |
---|---|---|---|---|
ヒト |
6.1 |
2.0 |
122 |
ー |
牛 |
0.9 |
0.3 |
832 |
市販の牛乳には含まれない |
バッファロー |
0.0 |
0.0 |
ー |
ー |
羊 |
0.3 |
0.1 |
2,494 |
ー |
ヤギ |
2.1 |
2.1 |
356 |
ー |
ロバ |
0.4 |
0.1 |
1,870 |
ー |
※ 現在、NMNの臨床研究において1日にヒトが摂取している量
Food Chem.2017 Apr 15;221:161-168明らかになりつつある
NAD+低下のメカニズムと
細胞老化の関係
これには細胞老化がその大きな一因となっていることがわかっています。
NAD+, NMNの分解を促進する
CD38(分解酵素)※
免疫細胞を中心に、主に細胞表面上に発現するCD38が
加齢に伴う組織中のNAD+, NMNの低下を引き起こす
原因となっていることが、インビトロ試験で判明
※ Chini et al.,Nature metab 2020、
Chini, C.C.S., Peclat, T.R., Warner, G.M. et al. CD38 ecto-enzyme in immune cells is induced during aging and regulates NAD+ and NMN levels. Nat Metab 2, 1284–1304 (2020). https://doi.org/10.1038/s42255-020-00298-z
Covarrubias, A.J., Kale, A., Perrone, R. et al. Senescent cells promote tissue NAD+ decline during ageing via the activation of CD38+ macrophages. Nat Metab 2, 1265–1283 (2020). https://doi.org/10.1038/s42255-020-00305-3
CD38(分解酵素)によるNAD+、NMNの分解を抑える食品由来成分
エンジュの花(キク科)や玉ねぎの皮、リンゴの皮、イチゴ、ベリー、ヒマワリ などに含まれるケルセチン、ルテオリン、アピジェニンなどの成分はCD38の発現を抑え、NAD+量とNMN量が増大することがインビトロ試験で判明しています。
Chini et al., Nat Metab 2020
ことで、
- ① NMNから合成されたNAD+を分解から守り、NMNの効果を増強
- ② NMNを分解から守り、働く時間を長く保つ
CD38の働きを抑える食品由来成分によりNMNの細胞活性化作用に対する影響を調べました。
その結果、期待される効果の概念図が下図になります。
- ・NAD+分解抑制作用については、ヒトCD38タンパク質を使った試験で確認済み
- ・NMNの作用については、細胞で確認
NAD+測定の実現
最近の研究では、老化に伴って全身のNAD+量が低下し、それによる様々な臓器でのNAD+量の低下が老化や加齢による身体機能の低下や疾患の罹患に関与することが明らかにされつつあります。
※Anal. Bioanal. Chem., 2023
<NAD+と老化関連疾患>
NAD+は以下のような老化関連疾患との関係性が報告されています。
- Case:1 神経変性疾患
- NAD+の神経保護作用については多くの報告があり、NAD+合成系に含まれる酵素が様々な神経変性疾患に関与していることも報告されています。これらの報告から、NAD+の代謝が神経変性疾患において重要な役割を持つことが示唆されています。
- Case:2 がん
- 多くのがん細胞では有酸素下での嫌気的解糖が亢進することが知られており、多くのがん種においてNAMPTが過剰に発現していることも知られています。また様々な研究結果から、NAD+代謝の阻害ががん治療のターゲットになる可能性も示唆されています。
- Case:3 代謝性疾患
- NAD+前駆体投与により、サーチュイン活性化を介した様々な代謝制御が試みられています。動物実験ではNMNやNRの投与による耐機能異常や肥満の改善も報告されています。